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翻訳メモリーのしくみ
CAT(Computer Assisted Translation)ツール
・翻訳対象箇所の切り出し
文書の中には翻訳の対象となる箇所と翻訳が不要な箇所があります。これを切り出して、翻訳対象文章だけを翻訳者に提示します。
HTMLやXMLなどのデジタルコンテンツでは、タグと呼ばれる制御データと翻訳対象文章が同じテキストデータに記述されているので、文章を切り出さないと翻訳者は膨大なデータの中から対象箇所を探すという作業を強いられます。
・翻訳文字数やワード数のカウント
翻訳対象文章を抽出して、正確な文字数やワード数をカウントします。正しい見積もりの作成に欠かせない機能です。
・翻訳メモリーの作成と適用
一度翻訳した文章は、原文と訳文を一対としてデータベースに蓄積されます。このデータベースを「翻訳メモリー」(TM)と読んでいます。
CATツールに翻訳対象文書を入力すると、過去のTMから同じような文章を探し出して翻訳者に提示します。翻訳者は新しい原文とTM内の訳文を比較して異なる箇所だけを翻訳します。
TMにより、新しい原文でもすべての文章を訳す必要がなくなるので、コストの削減と納期の短縮が図れます。また、TM内の訳文は基本的にレビュー済みの文章なので、これを適用することで一定以上の品質を確保することができます。
・グロッサリーの適用
対訳の用語辞書を作成してCATツールに読み込んでおくと、翻訳作業時に原文内の単語を検索して自動的に辞書内の訳文用語を翻訳者に提示します。翻訳者は、いちいち辞書を開いて用語を探す必要がなくなります。
グロッサリーの正確性は翻訳文の品質を大きく左右します。特に技術分野の翻訳では、どの用語を使うかが意味や品質に大きくかかわるので、複数の翻訳者が関わるプロジェクトではグロッサリーの機能は重要です。
・QA
CATには翻訳文のQA(品質管理)機能も搭載されています。訳抜け、数字などの間違い、スペルミスなどを自動的にチェックします。翻訳では、人間のレビュアーによる校正が欠かせませんが、CATによる最低限のQAを施しておくとより品質を上げることができます。
この中でも「翻訳メモリー(TM)」はCATツールを構成する主要な機能です。
TMは原文文節と訳文文節が対になったデータベースです。
CATツールは、新しい原文が入力されると、TMを検索して過去に似た文章構造の訳文がないかどうか探します。
このとき、文章内の単語、文章の構造などをチェックし、同じ系統の文章と判断すればピックアップします。
これを「ファジーマッチ」と呼んでいます。
似たような文章の場合は、どこが同じでどこが異なっているかを割合で示すと共に、相違箇所をハイライトします。
この割合を「マッチ率」などと呼んでいます。
マッチ率に応じて翻訳見積を作るのが一般的です。
翻訳時には、ファジーマッチでピックアップされた過去の訳文が翻訳者に提示されます。
翻訳者は、この過去訳文とCATツールが示す相違箇所を見ながら、必要な箇所だけを翻訳していきます。
通常100%マッチの訳文は翻訳せずにそのまま使用します。
このように、必要な箇所だけを翻訳し、新たに翻訳された文章は原文と訳文がペアになってTMに蓄積されていきます。
マニュアルなど繰り返しやバージョンアップが多い案件の場合、新しい版でも変更になった箇所だけを翻訳すれば済むので、コストや時間が大幅に節約されます。
TMには汎用性がありますので、依頼する翻訳会社を変更しても、TMさえ自社で保管しておけば、過去の翻訳資産を有効に使うことができます。
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