”わかりやすい”マニュアル制作講座

第32回 【レイアウト】印刷物とPDFの違い

 

マニュアル 取扱説明書 PDF 印刷物

 

現在では、マニュアルの配布形態としてPDFの比率が大きくなっています。

印刷物に比べて、ダウンロード可能なファイルを置いておくだけど済むPDFは、圧倒的にコストを低減することができます。

コスト削減効果が高いPDFですが、ユーザーの使いやすさという点では賛否があると思います。

長年慣れ親しんだ印刷物の扱いやすさ、読み易さは捨てがたいものがあります。

供給側の都合だけでPDFを配布媒体に選ぶのであれば、PDFでも使いやすい工夫をする必要があります。

 

メリット・デメリット

 

マニュアル配布形態としての印刷物とPDFのメリット、デメリットについて説明します。

 

印刷物

●メリット

  • 長年慣れ親しんでいる
  • いつでも、どこでも使える
  • パラパラめくって使える
  • 目に優しい

●デメリット

  • 製造コストが高い
  • 紛失すると再入手が難しい
  • 重い、場所をとる

 

PDF

●メリット

  • 印刷コストがかからない
  • ハイパーリンクや検索など電子的な仕組みがある
  • 内容を修正してもファイルを送信するだけで済む

●デメリット

  • PCなどデバイスがないと見られない
  • 流し読むことに向かない
  • マニュアルを読みながら操作・作業することに向かない

 

レイアウト上の留意点

 

基本的に印刷物もPDFも同じDTPソースから作成できます。

しかし、どちらを主眼に置くかにより、レイアウト的には差異化したほうが良い場合があります。

 

単ページか見開きページか

通常、印刷物は見開きページでレイアウトを考慮します。

見開きの中央部は製本時に綴じられますので、ノド側は余白を大きくします。

一方、基本的に単ページで閲覧するPDFでは、ノドや小口という概念は不要です。

ノドと小口の余白が異なると、単ページでページ送りしたときに違和感を感じます。

 

版面率の問題

コンテンツが入る領域とページ全体との比率が版面率です。

マニュアルの場合、印刷物では60~70%にしないと読み手は圧迫を感じます。

PDFの場合は、デバイス上で拡大縮小して閲覧するので、あまり版面率は問題になりません。

かえって、版面率が小さく余白が大きいほうが「スカスカ」な印象で違和感を持つと思われます。

 

ヘッダー・フッターの位置

見開きが基本の印刷物では、柱などのヘッダーやノンブルなどのフッターを、それぞれ小口側(ページの外側)に配置するケースがよくあります。

これにより、ページを開いたときに違和感なくさまざまな情報が目に入ってきます。

一方、PDFでは単ページで縦にページを送っていくため、ページごとにヘッダー、フッターの位置が変わると違和感を感じます。

 

このように、同じレイアウトソースを使い回す場合でも、ユーザーエクスペリエンスを第一に考えて、使いやすいレイアウトを工夫する必要があります。

 

 

株式会社 ワカール